大相撲 平成22年名古屋場所十日目[後編]


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東 方

西 方


塩をとって向き直る土佐豊です。土佐豊もなかなか気風のいい
相撲を取る若手ですが、この場所はここまで黒星先行でした。
春場所、一度横綱・白鵬に挑戦していますが、いずれは大殊勲
の星を挙げる勢いを、付けてほしいなと思います。

この日は、同じく気風のいい相撲を取る嘉風に完勝。しっかり
両回しを取り、腰を割って万全の体勢で寄り切りました。結局
名古屋では8勝を挙げ、勝ち越しました。



ベテラン相対します。ともに昭和51年生まれ。かつては千代大海・
栃東・琴光喜の3大関が君臨し、『花のゴーイチ組』と言われた世代
の生き残りです。両者とも、年齢は今年で34歳。すっかり古株になり
ました。若の里は、かつては満3年三役に定着していて、大関に最も
近い力士でしたが、その後、ケガによる十両落ちもあり、今ではそれ
も遠い昔となりました。一方の高見盛は、平成16年初場所以降、
連続40場所平幕在位。しかし一度も幕から落ちる事なく、最近では
専ら前半戦の土俵を沸かせています。両者とも、最早三役に復帰
する事は望むべくもありませんが、独特の個性や存在感を示しな
がら、一場所でも長く幕内で取り続けてほしいです。

『気合い入れ』の後、最後の塩を撒く高見盛。観客が一番沸く時
です。この時点で高見盛は、目下4連勝中。いわゆるツラ相撲では
ありませんが、なかなか勢いに乗ってきている様に見えました。



ゴーイチ同士の対戦。この日は歓声空しく(?)若の里が完勝。
高見盛はションボリの帰りの花道でした。しかし最終的には、
両者とも9勝6敗を挙げ、まだまだ元気という事を示しました。

右側、背中を丸めて仕切るのは栃煌山です。左側は白馬。白馬は
先場所、終盤大関も破って二桁勝ちながら、“何故三賞を貰えなかっ
たのか分からないNo.1”になりました。本当に、時々こういう現象が
見られるから悔しいものです。一方の栃煌山は、徐々に地力は付け
てきているのですが、今一つ開花出来ない状況が続いていました。
成長途上における膠着(こうちゃく)状態でしたが、この場所は序盤、
日馬富士と把瑠都の2大関を破り、9勝6敗。翌場所は念願の関脇
昇進を果たし、相撲開眼しました。拡大版はこちら



最後の塩をまき、土俵中央に歩み寄る白馬。端正な野武士の
様な顔立ちの白馬。小兵できびきびした動きを見せ、館内を
沸かせて欲しいものです。晴れの新三役の場所でしたが、残念
ながらこの日で負け越し。出直しです。拡大版はこちら

さて、次の一番は栃ノ心登場です。この栃ノ心もこの場所新三役。
夏場所は4大関を破り、気を吐きました。取り口も、吊りがすっかり
型になってきて、最近、吊りを得意とする力士が少ない中で、なか
なか魅力ある力士になっています。この場所も、壁に跳ね返されて
大負けをしましたが、9日目には、それまで7勝1敗だった大関・
琴欧洲に勝ち、キラーぶりを発揮しました。



組み合う栃ノ心(左)。対戦相手は朝赤龍です。この朝赤龍も、
かつては4大関を撃破した事があり、その翌場所が新三役でした。
ちょうど4年前の夏・名古屋の事です。同じ様な経緯を辿って三役
に上がった後輩に対して、右を差し、左で相手の右を殺して、
廻しを触らせないようにしています。拡大版はこちら

巧者の意地。朝赤龍が寄り切って栃ノ心を破りました。栃ノ心は
後が無い3勝7敗。一方の朝赤龍なのですが、中日にストレート
負け越しの後、これで2連勝となりました。



さあ、いよいよ大関の登場です。先ずは大関2場所目の把瑠都が
登場しました。ようやく地位に慣れ、本来なら今場所こそ優勝、と
士気が上がるところなのですけど、中継の中止という思わぬ事態
に、ややモチベーションが下がってしまったみたいです。前半、平幕
相手に3敗を喫して、優勝争いからも事実上、脱落していました。
この日の相手は、曲者、時天空です。拡大版はこちら

塩を撒く把瑠都。少しずつ、大関らしい雰囲気も付きつつあった
この頃。懸賞も全く懸からない中、淡々と仕切りを続けていました。
何となく渋い表情に見えますが、やはり乗り切れないのか・・・・?



大関把瑠都。相撲のほうは、何をやってくるか分からない
ベテラン時天空を投げて料理。土俵ほぼ中央で仕留めました。
これで7勝。次の日勝ち越しますが、その後4連敗で7敗。

大関相対します。左に琴欧洲。そして右に魁皇です。観客からは、
魁皇への声援が盛んに送られていました。それこそ、いなくなった
琴光喜への分までと・・・・・。この両者、先場所は千秋楽に対戦し、
魁皇が勝って通算1,000勝を達成したのでした。それだけに琴欧洲と
しては、先場所のお返しをしたいという気持ちが強かったと思います。
しかし本当に、魁皇が登場すると、一気に空気が変わりますね。それ
だけではありません。実はこの取組で、本来は幕内の取組で見られ
るはずのある光景に、ようやくお目にかかったのです。それは・・・・。



ハイ。懸賞の垂れ幕です。結び2番前になって初めて、この日の
懸賞付きの取組が登場したのです。やはり懸賞が全く懸からない
取組が進行していくというのは、どこか幕内らしくない、十両の土俵
がずーっと続いている様な感じがして物足りませんでした。いかに
懸賞というのが、幕内らしさを演出する重要な位置付けになっている
かを再認識した次第です。しかもこの懸賞、何だかジーンと来るじゃ
ないですか。『頑張れ名古屋場所』、『俺たちは相撲が好きだ』。
逆風だらけの世の中にも、この様に応援してくれる人がいるのです
ね。見ていて感動しました。こうやって、何があっても見捨てずに
応援してくれる人の存在は何物にも代え難い存在だし、相撲協会は
今一度、こうした存在に対する感謝の意を新たにする必要があるで
しょう。心から、有難いと感じてもらいたいです。拡大版はこちら

塩を取る魁皇。38歳の超鉄人大関。この日は琴欧洲との大関対決
でしたが、魁皇はここまで6勝3敗で、先場所に続いて9番は勝てる
かという勢いでした。先場所より内容も良く、終盤の横綱戦も、もしか
したら初場所の再来なるかも?と、期待を抱いたのですが・・・・・。



取り組む両大関。4大関がいる現在ですが、平成18年初場所に
昇進した琴欧洲は、魁皇に次いで2番目の古参大関となっている
わけですね。魁皇は右の上手には届いていません。しばし膠着
状態。やはり琴欧洲、先場所の二の舞にはなりません。

最後は琴欧洲が意地を見せ、老雄を投げ潰しました。自らも倒れ込む
体勢で上手投げの勝ち。しかしご覧の様に、下敷きになった魁皇は、
かなりヒヤッとする、危ない倒れ方でした。そしてそのまま土俵下まで
転げ落ち、かなり左ヒジ辺りが痛そうな感じで少し土俵上に戻るまで
時間が掛かりました。果たして翌日から、左肩負傷のため休場。よも
やの事態になってしまいました。大勝ちは無くても、もう魁皇には休場
も無いだろうと思っていたので、再度の休場と来場所がカド番になる
事は、大変残念に思いました。せっかく順調に白星先行で来ていたの
に、本人もさぞかし無念だったでしょうね。魁皇の連続勝ち越しは9場
所で途切れ、後は秋場所での回復を祈るのみ。拡大版はこちら



代わる土俵は鶴竜と大関・日馬富士の大関対決です。鶴竜はこの場
所、数場所続いていた低迷から脱出し、中日ストレート勝ち越しを決め
ました。一方、日馬富士は7日目以降は連勝していましたが、6日目で
2勝4敗となった時は、大丈夫か?と思いました。在位3場所目で優勝
も果たしていますが、その後はどうも泣かず飛ばずで、物足りない土俵
が続いています。白鵬キラーぶりも薄れてきたし、もっとこの大関が
ガンガン優勝に迫る成績を挙げないと、面白くないのですが・・・・。

土俵上、そんきょする両力士です。ともに小兵の技巧派。常に技
の応酬となる、面白い展開を期待したいものです。その一方でこの
両者は、正攻法の取り口も魅力ですね。拡大版はこちら



少し視線を移して、控えです。手前には、結びの一番を取る横綱・
白鵬が厳しい視線を土俵上に送っています。その向こうには、勝負
を終えた琴欧洲が勝ち残り。初日から7連勝の後、2連敗していた
だけに、3連敗を免れての勝ち越しには、琴欧洲もホッとしていた事
でしょう。しかし日馬富士ともども、ぜひ2度目の優勝を・・・・・。この
ままでは、白鵬の充実振りとますます差が開くという事は、両者の
表情の違いにも端的に現れている様な気がします。

同時刻の館内全景です。ご覧の様に満員御礼にはなっていません。
10日目は平日なので元々満員なる事は少ないのですが、画像を
見る限り、桝席の上の方はかなり空席があります。しかし、その上の
いす席の方はそこそこ埋まっており、割高な桝席だけゴソッと空席
が目立つ状態でした。入りは確かに少ないのですが、それでもそれ
なりの数の人が見に来てくれているというのは、安心材料でした。
もちろん、協会がその事で安堵感に浸ってはいけないのは言うまで
もありません。飽くまでも謙虚な姿勢を。と言いたいところですが、
それにしてもここ数年ずっと思う事ですが、外国人が増えました。



ケガと闘っている日馬富士ですが、同郷の後輩、鶴竜を仰向けに
転がしました。日馬富士も思わず体が傾いています。結局この場所、
日馬富士は2勝4敗から盛り返して10番勝ちました。新大関の場所
も4連敗スタートながら勝ち越していますが、軽量である事を考える
と、よくぞこんな離れ業が出来るものだと思います。

呼び出し秀男の呼び上げで、いよいよ結びの一番を迎えました。
稀勢の里−白鵬戦。 一度生で観たいと思っていた取組で、念願が
叶って本当に嬉しかったです。この日一番の好カードに、館内のボル
テージも一気に上がってきました。過去、横綱昇進後の白鵬には、
1回勝って金星を挙げたのみの稀勢の里。今日はいかに・・・・?



戦闘モード満々の表情で、ちりを切る両者。この一番に42連勝が
懸かっていた白鵬。大鵬の45連勝まで、この日を入れてあと4に
迫っていました。それだけに、横綱の気迫も並々ならぬもの。一方の
稀勢の里も、かつて再三再四朝青龍を倒した実績があり、気迫では
白鵬に負けていません。自己最高位の東関脇に戻って、後半、
見せ場を作りたかったところだと思います。

結びの一番でも、懸賞の垂れ幕が回りました。ただ、好取組にも
かかわらず、たったの6本だけというのが、時期を物語っています。
ただ、懸賞にしても観客にしても、数字(数)だけが重要なのではない
のは、明白な事実です。大切なのは、少数でも多数でも、「応援しよう」
という気持ちになってくれる事。この日は結び3番しか懸賞がありませ
んでしたが、逆にどこがどんな時でも応援してくれるかが見えた面も、
あったと思います。マクドナルドもその一つですね。場所前から、
「うちは懸賞金を出す」と言っていた事で話題になっていましたが、
6枚中、実に5枚がマクドナルドの懸賞でした。



そんきょする両者。白鵬は、本来ならこの場所も、初日からずっと金色
の廻しを締めているところなのでしょうが、この様な事態になりましたの
で、元の茶色のままになっています。両者気合いのこもったそんきょ
です。「何かあるかも」という期待は持てました。拡大版はこちら

塩をまく白鵬。こうして白鵬が塩を撒くと、いかにも『清めの塩を』と
いう様に見えてきます。表情も、まさに一点の乱れも隙も無い、と
いう様に見えます。「夢の中で双葉山と対戦した事がある」そうです
が、ここまでくると、本当に対戦させてみたいかも・・・・・。



塩を撒く稀勢の里。超若年出世だった稀勢の里も、もう24歳となり、
新三役からも5年目。少しずつベテランの域にも入りつつある様に
なりました。この場所東関脇でしたが、千秋楽に負け越し。目下
稀勢の里は、関脇を最高でも2場所しか連続で務められた事が無い
という状況で、本人も周囲からの期待が重荷になる部分もあるのか
も知れませんが、何とか関脇には定着して、そこで三賞常連にもなり、
あまり遅すぎない内に大関昇進も果たしてもらいたいと思います。

制限時間一杯、立ち合い直前のそんきょです。好取組、期待は大
です。「結びで波乱」を期待。しかしその一方で、白鵬の連勝にも
興味があるという、複雑(単に勝手?)なファン心(笑)。



勝負が決まる瞬間です。シャッターを押した瞬間、「あーっ!」と思い
ました。稀勢の里が投げを仕掛けて、白鵬が倒れていった様に見え
たからです。少なくとも、同体に見えました。しかし勝負が着いた後、
物言いはつきませんでした。その事で、周りではざわめきが起きてい
ましたが、結局白鵬の勝ち。決まり手は掛け投げでした。つまり足技
なわけですが、この画像、パソコンに取り込んでよーく観ると、確かに
白鵬の左足が、稀勢の里の右足に掛かり、絡める様な格好になって
いて、左手では掬い投げか小手投げに近い技を放っています。なる
ほど。白鵬は足を掛けていたわけですね。そして右足一本で残って
いたわけです。一方、稀勢の里の体(たい)は飛んでいますね。こうい
う際どい体勢で残れた白鵬はさすがだと思います。しかし稀勢の里も
善戦しましたね。さすが大関に一番近い番付の実力者。番付らしい、
ほかの下位の挑戦者とは一枚も二枚も違うという内容は、見せてくれ
たと思います。そして改めて観てみますと、行司も、そして審判も体を
寄せて、しっかりと見ています。拡大版はこちら

結びの一番が終わり、熱戦の余韻を丸で感じさせない静かな表情
で、勝ち名乗りを受ける白鵬。その時の館内全景です。この一番は
沸きましたね。特に最後の際どい決まり方に、本当によく沸きました。
やっぱり横綱と三役の結びの一番は、こうでなくちゃいけないですね。



弓取りの力士です。春場所限りで男女ノ里が退役し、現在は九重
部屋の千代の花が務めています。何となく、同部屋の千代白鵬に
面差しが似ている印象ですね。それにしても、横綱どころか、大関
もいない部屋の力士が弓取りを務めるというのは、極めて異例の
事だなと思います。宮城野部屋に、現在適任者がいないのでしょ
うか?とにかく、前任者とは正反対の、筋肉質な体型です。


打ち出し後、引き上げる関取・親方衆の車を見送るファンの列です。
観客は手前の道を歩いて敷地の外に出るため、その間は車は手前
で待機しています。そして車を優先させる場合は、歩行者をロープで
仕切って待機させ、車を通します。サービス精神のいい力士は、車で
通過する際に、窓を開けてファンに手を振ったりするため、それを目
当てにファンが待機して“見送り列”を作るわけです。名古屋場所な
らではのこの光景も、私はいつも最後、楽しんでから帰ります。こん
な時期だけに、“見送り列”の存在は有難いものだった事でしょう。



 以上、予定より時期がかなりズレ込みましたが、平成22年名古屋場所10日目の観戦記をお届けしました。
 先ず持って名古屋のファンにとっては、御当所大関だった琴光喜の存在が、いかに大きかったかを再認識させられた事と思います。今でもショックを感じている人は、少なくないでしょうしね。

 再三書いてきたように、やはり大相撲中継のない生活というのは、相撲ファンとして考えられないことでした。まるで元より相撲放送が行われない海外で暮らしているみたいだと思った事もありました。いつもなら千秋楽観戦が一番の希望となる私ですが、今場所は、仕事と重なって行けなかったのはともかくとして、もし行っていたら、何とも複雑な、つらい心境になっていた事でしょう。本当に放送席周辺が真っ暗での中入りというのは、何か『見捨てられた感』が漂ってくるものであり、もう二度と体験したくないなと思いました。秋場所、中継や天皇賜杯が再開されたのは、本当に嬉しいと思っています。やはり映らないともったいない。
 野球賭博など、不祥事で話題が独占された感のある大相撲ですが、私も今後の大相撲再生のためには、どうしても現役時代からの延長感覚で身内に甘くなりかねない親方衆だけではなく、外部からの人も取り込んでの運営が、望ましいのではないかと感じています。
 力士時代は、稽古や礼儀作法に対しては、「よその世界でも通用するように」と厳しく育てられます。そして親方になってからも、相撲界での仕来たりそのものに対しては、弟子を厳しく指導するのでしょうが、いざ不祥事が起こってしまうと、外に対しては、「自分たちの子宝を守ろう」という姿勢に転じてしまう様です。

 力士個人の作法・品格のみならず、組織運営や組織人格としても「外に通用するように」なるためには、一体どうすれば良いのか?どんな世界でも、その世界独特の慣わしや歴史はあるわけですから、一概に相撲界だけを『特殊過ぎる』と決め付けたりは、したくありません。しかしそれでも、世の中の一組織として見られているのだという意識は、今後、相撲協会にますます求められていくのだと思います。



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