平成26年 大相撲春場所十日目(中編)


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東 方

西 方

代わって、東方幕の内土俵入りです。先頭をゆく力士は里山ですが、何といってもこの前の場所の千秋楽、勝ち越しと三賞(技能賞)が懸かった一番で、勝ったかと思われながら髷を掴んでの反則を取られ、大魚を逃したのは悔やまれるところです。本人の中でも、生涯頭から消えない一番になってしまったのではないでしょうか?それにしても、何故最近、『故意』では決してない髷を掴んだ動きが、いちいち反則と取られるようになったのでしょう?私は、里山戦での判定などは、力士のモチベーションや応援するファンの盛り上がりにむやみに水を差す行為として、控えるべきだと感じています。目に余るぐらいグイーッと引っ張っていたのなら、それこそ『故意』であると判定されて然るべきですが、瞬時の動きの中で偶然引っ掛かったというのは、黙認したほうが融通が利くというものではないでしょうか?かつての板井−大乃国戦でも、現在の風潮なら恐らく物言い行きだっただろうという一番が、見られましたね。まあ、昔のことを書いてもしょうがないですが、本人も無自覚の内の流れの中の動きを、敢えて『故意による反則』と解釈されることは、当人の心情を察すると心が痛むものがあります。 右から、里山、貴ノ岩、鏡桜、常幸龍、佐田の富士です。東方の土俵入りが続きます。


画面右、遠藤が紹介されて館内は大歓声です。もう初髷も近いと思われたこの場所、ザンバラ髪の姿を今一度記録に留めておこうと思いました。しかし遠藤、場所入りの時もすごい声援でしたよ。 『最後は 大関鶴竜 モンゴル出身 井筒部屋』とアナウンスされている時です。大関としての鶴竜を見るのも、実はこの場所が最後だった訳です。2年前のこの春場所ではワンチャンスで大関を射止め、この春では同じくワンチャンスで横綱を射止めました。心静かにチャンスに強い、そんな鶴竜です。


車いす席の直下にある東の花道を引きあげていく幕内力士です。しんがりが大関・鶴竜。次の場所からは、横綱土俵入りとして姿を見せることになります。 西の横綱、日馬富士土俵入りです。休場明けながら初日から9連勝と綱の責任を果たしていました。横綱在位9場所目。この時点で師匠と並んだわけですが、抜き去るのは確実でした。小兵で比較的晩成型でも、決して短命ではない横綱となってほしいものです。


車いす席からはいつもこの角度。『お尻から 不知火拝む 浪速場所』ですね。元関脇の出羽錦忠雄さん(元田子ノ浦親方)みたいには、上手い句が詠めません。 両手が自然なカーブを描き、そのまま手のひらを下に返す。私の好きなタイプの不知火型土俵入りです。師匠譲りの、基本の型を崩さないスタイルに、好感を覚えるわけですね。


こちら、土俵入りのバージョンを色々変えるほうの横綱が、土俵入りを終えて引きあげていきます。東方は車いす席からはこのショットだけ。露払いは、本人よりも断然巨漢の臥牙丸です。 中入り後の取組です。最初は舛ノ山に十両の朝赤龍です。背中を向ける朝赤龍は、丁度10年前のこの大阪で、千秋楽まで幕内優勝争いを演じ、13勝2敗の準優勝タイで三賞をダブル受賞しました。その場所の優勝は同部屋の横綱・朝青龍でしたが、展開によっては同部屋決戦が実現する可能性もありました。その後、関脇まで昇進した朝赤龍、今では十両の主になりつつあります。さて、対戦相手、顔が見えるのは舛ノ山です。


巨漢の舛ノ山が体(たい)を利して小手投げを打とうとします。朝赤龍の左の腕(かいな)を極(き)めているような格好ですね。 しかし元関脇はしぶとく残します。投げられた時、上手く足を送ったのでしょう。両者体(たい)が離れ、再び自分有利の組み手を狙います。


粘るベテランを相手に、最後は若武者の舛ノ山が勝利しました。勝ち名乗りを受けた舛ノ山はこの表情。大きく口を開け、激しく呼吸をしています。相撲ファンの皆さんならご承知のとおり、舛ノ山は先天的に肺が人より小さいというハンディがあり、およそ20秒を超える相撲を取ると、激しく息が上がります。過去には7勝7敗で迎えた千秋楽、粘る相撲の末敗れた後、あまりの苦しさに土俵上に仰向けになって倒れ、しばらく起き上がれなかったこともありました。負け越しも決まって踏んだり蹴ったりでしたが、苦しくなっていても限界まで取り切った姿に、ファンは心を打たれ、大きな拍手を送るのです。 立ち上がった舛ノ山も、まだご覧の表情。見ているこっちまで胸が詰まってきそうになりますが、肺のハンディ以外に膝のケガもあり、本来持っているはずの力はなかなか出せなさそうです。これだけ息が上がって苦しそうにしているのを見て、「この人、長生き出来るのだろうか?」と心配する向きもあるそうです。気持ちは解りますが、それよりも本人が自分の選んだ道で、どこまで悔いが残らないように全力で生きられるかでしょう。そういえば、師匠の千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)も、「太く短い人生を送りたい」という理由で、角界入りを志願したのでした。舛ノ山も自分で決めた生き方で、悔いなくやり切ってほしいです。拡大版はこちら


真っ赤なタオルを手に、精神を集中させるのは里山です。あの悔しい反則負けの負け越しを受けてのこの場所、思うように星は上がっていませんでしたが、気力はいささかも陰りを見せません。気持ちは若々しいです。拡大版はこちら 幕尻で3勝6敗で迎えたこの一番、相手は巨漢の新鋭、照ノ富士でした。非常に業師振りを発揮した内容のある相撲でしたので、ここからは暫く里山−照ノ富士シリーズといきましょう。まずこの時点では、巨漢の照ノ富士が体力に物を言わせて、右上手を取り、根こそぎ投げ飛ばそうかとしますが、里山はピラニアのごとく食らいつき、左下手も離さず、左足が浮きかけながらも残ります。


顔が見えるのが照ノ富士ですが、粘る相手にしびれを切らしている表情にも見えます。両上手からこれまた根こそぎ吊り上げようと力を込めるも、里山は相手の左腕(かいな)の下に頭を潜り込ませ、小兵の十八番とも言える得意の体勢になって、なおも食い下がります。右手は相手の太ももあたりにありますが、もし廻しを取られていなくて動きが取れていたならば、ここから内無双に出るところでしょう。里山としては、ガッチリ握られている廻しを、いかに切るかの勝負になっています。拡大版はこちら 向きが変わりました。顔が里山です。長い相撲になっています。照ノ富士の上手は肩越し。かつての把瑠都を思わせる上手の恰好になっています。丸で相手の肩の下から顔が生えているようになっている里山は、右で上手を取っています。しかしこの上手からの芸はなかなか出せない。両上手を依然取られているために、足技にもなかなか踏み切れません。とにかく辛抱一筋。吊られない体勢はしっかり作っています。里山はさしずめ、『平成のピラニア』といったところでしょう。拡大版はこちら


今度は足を掛けて内掛けにいきました。館内も「オーッ!」と沸きますが、相手も重い腰で残します。勝負はますます持久戦になります。もしこのまま下手投げを打ったりすれば豪快に決まるところだったのでしょうが・・・・。 最後は照ノ富士が強引ながら体力に勝負を決めさせて前に出ました。里山に食い付かれている体勢のまま、寄り切りました。廻しを離さなかったのが生命線になりましたね。惜しくも土俵を割った里山は3勝7敗、後が無くなりました。一方、新入幕だった照ノ富士は、前日まで2勝7敗だったのですが、ここから6連勝の離れ業で見事勝ち越しを決めました。顔も強面でスケールも大きく、何より雰囲気が落ち着いていて大物感を漂わせています。師匠は先輩2横綱の四股名を合わせた四股名を与えたわけですが、果たして将来、横綱まで上り詰めるのでしょうか?


巨漢同士の交錯。水を付ける臥牙丸と、受ける千代丸です。四股名も最後が『丸』で共通していますね。それにしても、デッカイ背中を無理やりすぼめて水を受けているように見えて、なかなかユーモラスです。 土俵上、四股を踏まんとする千代丸です。九重部屋のデカ千代兄弟ですが、こちら千代丸のほうがお兄さんです。そういえばこの力士、四股の足が全然上がっていないと、バラエティー番組で突っ込まれていたことがありましたね。引き合いの師匠の現役時代の四股の映像が出てきていましたが、確かに千代の富士の四股は、生でも見たことがありますけど、よく足が上がってきれいでした。


塩を取り、向き直った千代丸。同部屋の千代大龍がすぐ横で控えについています。いや〜しかしこの堂々とした正面ショットをご覧あれ。先ほどの場所入りもそうでしたが、とにかく堂々『おすもうさん』という風貌で、あごの肉のつき加減はやはり、松登です。いずれもし大関に上がったら、『松登二世』と言われないでしょうかね?拡大版はこちら 強そうな千代丸ですが、一気に土俵際に詰め寄られてご覧の表情。必死にこらえる表情と、左側の画像とのギャップがまた面白いです。新入幕だった千代丸ですが、相手は師匠同士の対戦では圧倒的に分が悪かった、伊勢ケ浜部屋の宝富士です。拡大版はこちら


レジェンド、旭天鵬が土俵上です。あの、奇跡の初優勝の後も燃え尽きることなく、2場所連続二桁勝つなど、健在の大老です。初土俵が22年前のこの春場所でした。その時まだ7歳の子どもだった白鵬が、既に長寿横綱の域に達しています。改めて、鉄人ですね。 対戦相手は巨漢の天鎧鵬でしたが、土俵際、クルリと回り込むような恰好で勝利。若手を仰向けに転がし、ベテランの巧さを発揮しました。決まり手はすくい投げ。


貴乃花部屋の幕内第一号、貴ノ岩です。苦節10年、ようやく、平成の大横綱が幕内力士を育てました。その貴ノ岩、十両時代はずっと8勝か7勝だと思っていたら、ある場所突然12勝をして十両優勝を果たしました。そしてそこからまた8勝、7勝を繰り返している内に入幕。新入幕だった前場所は7勝だったのですが、千秋楽の遠藤戦の勝利は光りました。まだ24歳ですが、こちらもかなりゴツイおっさんの風貌です。 先ほどの千代丸の完敗を見届けた千代大龍が、そのうっ憤も晴らさんとばかりに、貴ノ岩に完勝しました。千代大龍は、序盤よもやの4連敗を喫しましたが、金星2個の実績もある実力者ですからね。まだ三役経験が無いので、弟弟子の千代鳳に先を越された悔しさをぶつけてほしいところです。さて、貴ノ岩、この日は敗れるもこの場所10勝。十両優勝以来の二桁を記録して、翌場所からまた暫く8勝と7勝が続くのかと思いきや、まさか3勝12敗と大負けして十両に陥落してしまうとは・・・・・。


両者廻しに手が届かないながらも組み合うのは、豪風(左)と常幸龍(右)です。ベテラン豪風は離れて取る相撲なので、四つ相撲の常幸龍に組まれては勝手が悪い。果たしてこの後寄り切りで常幸龍が勝ちました。 私の生観戦では余り目にしない『不戦勝』の垂れ幕。実は大砂嵐がこの日から休場しました。そういえば土俵入りで現れなくて「あれ?」と思っていたのですが、初日から7連勝していながらよもやの休場。初の大阪での大砂嵐のショットは来年までお預けかと思いましたが、再出場してきたので13日目には実現しました。なお、新十両だった昨年名古屋場所でも、その姿を収めています。




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